自治体 | 京都府亀岡市 |
---|---|
氏名 | 桂川 孝裕(TAKAHIRO KATSURAGAWA) |
生年月日 | 1963年2月10日 |
出身地 | 岐阜県 |
本事業開始日 | 2020年8月 |
私は平成27年11月に市長に就任したのですが、亀岡も人口が少しずつ減っており、税収も将来減っていくということを見据える中で、総務省が進めてきた「ふるさと納税制度」には大変関心を持っていました。亀岡の街の魅力や、亀岡独自の産品をうまく発信・アピールできるきっかけになると思い、積極的に取り組んできました。
結果的に平成27年には300万だった寄附額が、平成28年度には1億2000万、それから3億となり、5億となり、昨年が11億、今年は23億というかたちで積極的・戦略的に取り組んできました。
本来のふるさと納税は、ふるさとの発展に貢献するために寄附したいという想いが本質だと思っています。それが少し変わって、良いものをもらいたい、返礼品合戦のようになってしまっているのが現状だと思っています。
ただし地域としては、自主財源として、このように寄附いただけるのは、すごくありがたいことです。ふるさと納税は、地元産品を買わせていただいて全国に送るということで、地域の経済を回すことができますし、寄附いただいた全体額の約半分弱を財源として新たな事業に使わせていただけるので、大変ありがたいなと思っています。
その中で三重県いなべ市さんの「楽器寄附ふるさと納税」の取り組みをテレビで知り、「ふるさと納税ってこういう使い方もあるんだ」と、正直驚きました。楽器寄附ふるさと納税は、自分が持っている楽器を寄附することによって、その楽器が評価をされ、その評価額が税控除されるという制度です。
しかも、楽器を購入して大切に使ってきた方たちからすると、「自分の想いを譲り渡していける」ということで、とても良い制度だと思いました。本来のふるさと納税制度の想いと合致する部分がこの制度にはあると考え、ぜひともこういう制度をうまく活用できないかなと思っていました。
亀岡市には中学校が8校あり、そのうち5校にブラスバンド部があります。私もいろいろな機会で学校を訪問するのですが、やはりブラスバンドの楽器はどうしても値段が高いですし、何代にも渡って使い込まれており、手入れをしても楽器が悪くなってきているという声をたくさん聞きました。学校の備品ではありますが、行政で全て用意できているわけではなく、PTAや学校協力会から寄附をいただいて購入してもいるという状況でした。さらに、年度によってブラスバンドの部員が増えると楽器が足りないということもありました。
そういった部分に何らかのサポートや応援ができないかと思っていたところ、「楽器寄附ふるさと納税」を知り、まさにSDGsで言えば開発目標の4番「質の高い教育をみんなに」という面で、楽器があることにより、子どもたちが音楽を通じてたくさんの広がりを作ることができるだろうなと思いました。
更に「ものを大切にする」ということの大事さ、SDGSの12番に「つくる責任 つかう責任」という内容があります。ものを大切に使うということはとても重要ですし、その楽器を持っていた方も楽器への想いがあって購入・所持されていたわけですから、そういう想いをこの制度を通じて引き継いで、その方たちの想いにも貢献できるというのは、とても良い制度だなと思いました。
音楽を奏でる人たちの想いが楽器を通じて広がっていく、伝わっていく。まさに持続可能な音楽を通じたコミュニケーションが広がっていくのは素晴らしいと思い、この制度をなんとか導入できないかと、教育委員会にお願いしたのが始まりですね。
令和2年8月に取り組みを開始させていただき、思ったより早く、2週間くらいで最初の寄附をいただくことができました。たくさんの自治体の中から亀岡市を選んでいただき、楽器を寄附いただけたことは大変うれしいですし、その想いをしっかり子どもたちに伝えたいなと思いました。
新型コロナウィルスの影響もあり、運動会や文化祭、修学旅行など、学校や子どもたちもいろいろな活動ができない中ではありましたが、ちょうど昨年の秋、完成して間もないサンガスタジアムby KYOCERAを使って、体育祭・運動会・交流会のようなイベントがありました。そこで寄附楽器の贈呈式も皆さんの前で開催させていただきました。子どもたちもとても喜んでくれましたし、メディアからの注目や、亀岡市の取り組みということで評価をいただき、我々としてもありがたかったと思っています。
寄附いただいた楽器も大変良い状態で、子どもたちも「いつも使ってる楽器と音が違う!」と喜んでいました。寄附いただいた方にも手紙や動画などで御礼をお伝えしているのですが、できればそういう方々を演奏会などにご招待できたら良いなとは思っています。
寄附いただいた方のお住まいも、東京から京都まで様々でした。ご自身が愛用された大切な楽器を子どもたちに贈呈することによって、またその楽器が生かされていくという喜びを感じていただけているのではと思っています。
まさに「想いをつなげる」という部分の違いがあると思いますね。やはり一般のふるさと納税は、お金で、サイトに返礼品があって・・・ということで、自分の生活を豊かにするためにということだと思います。対して楽器寄附ふるさと納税は、自分が可愛がっていた楽器を届けるということですから、そこにはいろいろな想いがあると思いますし、寄附される方も、どの自治体に寄附しようかと考えていただいた上で亀岡市を選んでいただいていると思っているんですね。機会があればその土地を訪れてみたいという気持ちもお持ちでしょうし、そういうことがきっかけで亀岡を知っていただき、我々もご縁をいただくことができたわけですから、これを今後は生かしていきたいと思っています。
やはり今は人口減少の時代なので、まちを応援していただく、関係する方々をどう増やしていくか、ご縁のある方々をどう増やしていくか、まちにとっても大事ですし、それが結果的に移住定住につながっていくと思っているのですね。そういう意味では、この楽器寄附ふるさと納税を通じて亀岡を知っていただいて、そこにいる子どもたちや音楽に携わる人たちの想いが、寄附した人たちに伝わっていくということにもつながると思っています。
そういう面ではこのご縁を広げていくことが大切だと思いますし、できれば寄附してもらったお礼を子どもたちから直接伝えてもらいたいので、これを通じて交流が生まれて、観光で京都に来られたときに「ちょっと亀岡にも寄ってみようか」と思っていただければ、まさにそれは関係人口への始まりだと思っています。それによってまちが少しでも賑わってくるとか、このまちに対する想いが広がってくると思っています。
実は亀岡市は「SDGs未来都市」に選定されています。そのきっかけとなった「かめおか霧の芸術祭」がその一つだと思います。
この地域には、京都市立芸術大学や嵯峨美術大学、京都芸術大学などがあり、そこの教授や卒業生で、亀岡に住んだりアトリエを持っている方が多いんです。私が市長になってから、そういう人30数名くらいとお会いしてお話をさせていただきました。
亀岡市は秋口から冬にかけて、丹波霧という霧が出るんですよ。霧は「大地の呼吸だ」と言われており、早ければ15分くらいで雲海になったりします。私は亀岡出身ではなく、ご縁があって亀岡に来たのですが、とても霧に魅力を感じていたんですね。
たくさんの芸術家の方々とお会いしてお話する中で、霧というのは芸術的にも素晴らしいんだと、一瞬のうちに水墨画の世界が生まれるみたいなものなんだと、そういう話の流れから、「霧の芸術祭をやりましょう!」ということになったんです。
それがきっかけとなり、芸術家のコミュニティから、どんどんそういう人が集まってくるようになりました。令和3年も2月に18日間の霧の芸術祭を開催したのですが、コロナ禍ですが述べ5000人くらいの方に来ていただくことができました。その運営側に関しては、ボランティアや関係する芸術家の方々のつながりがどんどん広がり、運営スタッフだけでも200名近くお手伝いいただけるようになりました。
まさに芸術祭を通して関係人口が広がってきているなと実感しています。特に私はまちの魅力の中に「どう文化度を高めるか」ということが重要だと考えており、そのためには、視覚だけではなく五感で感じられるような芸術的な要素が必要だと思っているので、そういう部分を霧の芸術祭を通じて感じてもらいたいと思っています。
ちなみに普通の芸術祭だと、お金を出して作品を作っていただいて展示するかたちだと思うんですが、霧の芸術祭はそうではなく、「地域の課題を解決する」芸術祭となっています。
実は亀岡市は「プラスチックごみゼロ」宣言をして、令和3年1月からレジ袋の提供禁止条例を全国初で制定し、環境先進都市を目指す取り組みをしています。その中で、芸術祭のメンバーと「環境」とがコラボして、「FLY BAG Project」という取り組みを行っています。亀岡にはパラグライダーのアクティビティがあるんですが、役目を終えたパラグライダーの生地を活用してエコバッグを作り、アップサイクル商品として販売しているんですよ。それも霧の芸術祭でのコラボによって生まれました。
魅力のひとつとして、子どものうちから「環境体験」を積極的に行っています。今、亀岡の小学校を卒業する子どもたちが、新しくできる「川の駅」からサンガスタジアムまでラフティングで自然体験をして、尚且つ一緒に川のゴミを拾ったりする「環境体験」をしてもらう取り組みをしようと思っています。
今でも中学を卒業するときには保津川下りの乗船体験をプレゼントしているんですが、今年からは、保津川下りをしながら途中で降りて環境活動をすることを考えています。ふるさと体験学習的な位置づけで、中学を卒業するときには、保津川下りで川の清掃活動をするというプログラムを作り、「亀岡に住んでいる中学生は卒業するときに、保津川を通じてふるさとを実感する」という取り組みです。亀岡が今積極的に活動している環境への取り組みや、自然の豊かさ、川と親しむことの大切さなどを感じてもらえるようにしたいと思っています。
亀岡の今の課題は、高校を卒業すると若い子たちが出ていってしまって、帰ってこないということなんですよ。家の中でパソコンをしたりゲームをしたりするだけで育っていくのではなくて、やはりふるさとの自然や環境との関わりを強めて、思い出をたくさん作ることによって、いつかまたふるさとに帰ってきてもらえたらいいなと思っています。そのためにはしっかりとした思い出が心に残っている必要があると思います。そういう自然体験や環境体験をすることで、ふるさと意識をしっかりと持って育っていってもらうことが必要だと思っています。将来の亀岡を担っていく子どもたちを育てるための投資と考えています。
そうすれば子どもたちが、自分のふるさとについて体験を通じて語ることが出来るようになると思うんですよ。保津川下りや環境活動によって、「自分のふるさとはこういう場所なんだよ」と語るようになることが大切だと思っています。
ぜひとも、寄附した側と寄附された側、つまり子どもたちとのつながりをより強められるきっかけが出来たら良いなと思います。例えば音楽会に招待するとか、せっかく想いを持って寄附していただいたので、その想いに応えられる関係づくりをする必要があると思っています。
できれば寄附いただいた方に要望を聞いていただいても良いのかなと思います。音楽祭に招待するとか、招待できなくても動画で楽器を使ってこういう活動をしているという実態を送ったりとか。
想いを届けていただいた分のお返しをどういうかたちでするかというのも大切なことですし、それは子どもたちにとっての教育的にも大切なことなので。楽器を大切にしてきた方たちが、自分たちに寄附してくれたわけですから、そのお礼も兼ねた報告をする。こうして使っていきますよと。そうすれば寄附したかいもあるし、安心してもらえるのではと思います。
まさに関係人口を増やすという面においても、ご縁を大切にするということは大事なことですし、子どもたちにとってもそういう方たちの心配りがあって初めて自分たちは活動できるんだとい、恩恵に預かっていることを実感することも大切なのですよ。それはまさに教育の一環ですから、そういうことが直接的にわかるようなやりとりができると良いんじゃないかと思います。
自治体の方からのご質問等につきましては、お電話または下記フォームよりお問い合せください。
楽器寄附ふるさと納税実行委員会
運営事務局:0120-106-803